最強のユニット論
第9回 ピンチをチャンスに

世の中の景気が良くても悪くても、あまり影響を受けない。ボロイ儲けは難しいが、食いっぱぐれはない。クリーニング業は、そんな地味で堅い商売だと思われていたし、業者自身も何となく、その気になっていた節がある。本当にそうなのだろうか国内はもちろん、欧米各国でも利益率の高い、いわゆる儲けの大きい商売のランク付けで、クリーニング業がいつも上位5位以内にあるのは、いったいどういうことだろう・・・。
今や業界はバブル崩壊後、暗い長いトンネルの中に追い込まれて、晴れ晴れとした明るいニュースなどには、めったにお目にかかることはできない。業者はもちろん機械や洗剤メーカー、機材商、そして組合をはじめとする各グループの、あの輝かしい歴史や活力は、どこに行ってしまったのか。

この世の不況は業界にとっても、もろに大きな壁であるという事実を、まずもって肝に銘じることが第一であり、同時にこれからの環境は、常にこういうものだという認識を持った方がいいかもしれない。これからは、地味で、真面目で、しかも積極的に仕事に取り組むものだけが生き残れるのだと思ってほしい。世の中が変わったのだから、仕事への取り組み方も変えるべきである。これまでと同じようなことの繰り返しではなく、新しい眼、違った発想で現状を見直し、改善してほしい。

これまでに仕事のやり方、流し方について、よりシンプルに、より合理的に行うための改善に、真剣に取り組んだことがあるだろうか。クリーニングの原点である洗浄について、誰にも負けない理論と実践を確立しているだろうか。また仕上についての標準化を考え、そのための合理的な手順、理想的な機械とその配置をストップウォッチ片手に、レイアウト画面を何枚も書き直しながら、検討したことがあるだろうか。自分が手掛ける品物について原価、損益分岐点、売上に対する経費比率など、経営に関する数字を把握するのに悪戦苦闘したことがあるだろうか。

これからの経営は、たとえ小さな企業であっても、ある程度は数字や理論で武装することが必要である。そして、これまでにやったことのない面倒な問題に取り組むのは“いま”である。皆が何をしたらいいのか迷っている、この時がチャンスである。このピンチをチャンスに変えるのは自分自身であることを忘れないでほしい。

タムラクリーニング