年頭所感

全国クリーニング協議会

会長 髙木 健志

髙木会長

 明けましておめでとうございます。

 また、皆さまには輝かしき新年を迎えられたこととお慶び申し上げます。

 昨年を振り返りますと、新型コロナウイルスの位置付けが日常生活の中で共存していく病気へと移行したことや、インバウンド需要が活発になってきたことにより、社会の構造そのものがコロナ前に戻りそうな勢いを感じるとともに、この流れは2024年においてますます拍車がかかると予測できる状況にあります。

 しかしながら世界に目を向けますと、いまだに終息が見えないロシア・ウクライナ問題や、イスラエル・ガザ地区での戦争は、宗教上の問題が起因したアラブ人とユダヤ人の対立によって、罪なき大勢の人達が犠牲になっている悲惨な光景を私達は連日メディアを通じ見聞きし、心を痛めています。この争いが今後も続けば社会情勢・経済動向は悪化し、日本への影響も大きくなると同時に市場経済の混迷や原油価格の不安定さから、様々な物価の高騰や動力コスト上昇は避けがたい状況になっていきます。

 このような背景を受け、クリーニング業界では昨年、多くの会社が価格修正を行いましたが、今年も春の繁忙期を軸に再検討・準備計画を立てられているところも多いと推察されます。

 一方、お客さまのライフスタイルの中で、クリーニングを利用する理由やタイミングが明らかに変化しているのも事実で、“着たらクリーニング”という思考から“必要なものだけを必要な時にクリーニング”という行動パターンへと変化しています。その一例として、近年よく耳にする“着る前洗い”という言葉は、冬に着た衣類を春にまとめてクリーニングするのではなく、次の冬が来る直前にその冬に着るものだけをクリーニングする、という傾向を示していて、それが今はスタンダードになろうとさえしています。

 我々は、ある意味この現象を受け入れざるを得ないのですが、その先には点数減に起因するクリーニング需要の縮小という「壁」が待ち受けていることや、約半年間クリーニングに出てこないことを考えると汚れ落ち・シミ抜きなど「技術力」が、より問われることになっていきます。更に、ビジネスシーンや日常生活の中で衣類のカジュアル化が進み、この波もクリーニング業界にとっては強い逆風になっていきます。もちろん、国をあげてSDGsに取り組んでいることで「クールビズ」などが推奨され、節電など省エネや環境保護への意識と行動は、今後ますます拍車がかかることを認識するとともに、我々もその一員であることを理解した上で、クリーニング需要の維持・拡大という大きな課題に立ち向かっていかなければならないのです。

 今、それぞれが直面している店舗運営・工場運営にかかる人件費・動力費・輸送費など諸経費の高騰は、経営に相当ダメージを与えていて、商いの礎である“入り増やして出を抑える”を実践し続けても、並大抵の努力では成果に届かないレベルにある状況も事実だと実感しています。

 しかし、私達は“クリーニング業は人々の生活を豊かにするために必要不可欠な仕事である”という自負を根底に持ち続け、改めて価格という切り口とは別の「それぞれの価値」を高めていくことに注力することが大切ではないでしょうか。そして、そのひとつひとつの価値は、お客さまにきちんと届く(認めていただく)ことで初めて真の価値として位置づけされ、店舗でもインターネットを含む宅配でも、最終的にアナログ(直接お客さまと会話ができたりお互いを思いやることができる)の利点・強みを活かしながら、SNSなど色々なコミュニケーションツールとの併用で、お客さまとの接点・関係性を強く深くしていくことでチャンスの窓口を広げていかなければと実感しております。

 最後に、2024年が会員各社さまにとって実り多き1年になりますようお祈り申し上げるとともに、引き続き全協の活動に対し、ご理解・ご協力をたまわりたく何とぞよろしくお願いいたします。

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